~Still~
颯太の優しく、それでいて誘うような熱のある口づけが終わった時、エレナは彼に見つめられて思わず赤くなった。

気まずくて横を向こうとしたのに、颯太の手が後頭部から離れない。

「今のは、僕を傷つけた罰です。僕はあなたの昔の男じゃない」

颯太は至近距離からエレナの瞳を捉えたまま、ニヤッと笑った。

「あのときの約束、覚えてますよね。僕が出世して、僕に惚れさせたら、付き合うって」

エレナは、眼をそらした。

「ダメです。こっちを見てください。それに、結婚だってしてくれるんですよね」

颯太の端正な顔が傾き、切れ長の眼がエレナの唇を見つめた。

半ば伏せられたその眼が実に妖艶で、エレナはコクンと喉をならした。

「あなたを絶対、惚れさせる。絶対僕に抱かれたいって思わせます」
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