~Still~
「……エレナさんは、どうして女優になったんですか?」

エレナはコーヒーを一口飲んで口を開いた。

「シェリル・シーマに子供の頃会ったの。当時、彼女は女優として絶頂期だった。
ニューヨークの街中で、私、彼女を取り囲むパパラッチにぶつかって転んだのよね。そしたら、彼女、自分の買い物を放り出して私に駆け寄って抱き起こしてくれたわ。雨が降ってて、自分のワンピースが汚れるのもお構いなしで。
綺麗で、優しくて人気者で、おまけに人に夢を与える仕事なんて最高でしょ?
私、彼女に聞いたわ。どうしたら、貴方みたいになれるの?って。そしたらシェリルはこう言った。
とにかく、踏み出さなきゃ始まらないって。
やってみなきゃ、やれるかわからない。やらなければ、やれることはないって。
私、その時に思ったの。やりたいことが見つかったって。それで彼女に言ったの。私も女優になるわ。いつかあなたと共演するって!
彼女、待ってるわって言ってくれて……。
だから私、絶対に諦めないって誓ったの。何があっても、負けないって!あっ…………!」

エレナは、颯太の優しい眼差しに気付き、話しすぎた自分を恥ずかしく思ってうつむいた。
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