~Still~
「社長なら多分もうすぐ」

バーテンダーが答えかけた時、

「エレナさん」

スタッフ専用の入り口からバックヤードをつっきり、フロアに入った颯太の声が響いた。

颯太は軽く頭を下げながら、ショートヘアの女性の後ろを通りすぎ、エレナの隣に立つと白い歯を見せた。

「お待たせしました、エレナさん。食べたいものは決まりましたか?」

エレナは立ち上がって颯太を見たが、彼の背後に見える、ショートヘアの女性に気を取られた。

彼女の、見開かれた眼。

小さく開いた口。

「あの、」

「神谷さん!」
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