~Still~
女性がエレナの声を遮り、颯太が反射的に振り向いた。

「あ……高宮さん!すみません、気付かなくて。いらっしゃいませ」

高宮と呼ばれた女性は数歩歩いて、颯太とエレナの傍に立った。

「エレナさん、こちらは高宮さんです。以前お世話になった出版社の方です」

颯太が紹介すると、

「初めまして。わたくし、文芸清輝の高宮理恵と申します」

彼女は会釈してから、品良く微笑んだ。

「城田エレナです」

エレナがペコリと頭を下げると、理恵は颯太に向き直り彼を見上げた。

「神谷さん、先日のお話なんですが、何とかよいお返事をいただきたくて。アポなしですみません」
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