~Still~
颯太は一瞬唇を引き結んだが、すぐに儀礼的に微笑んで理恵を見た。

「すみません、高宮さん。また日を改めてお話ししましょう」

「ごめんなさい、突然きてしまって。ではまた、近いうちに」

「行きましょう、エレナさん。高宮さん、失礼します」

「ええ。では、また近々」

颯太はエレナの手を握り、店の外へ出た。

「何が食べたいですか?」

エレナは颯太を見上げて言った。

「食べ物は颯太くんに任せる。私は颯太くんのご実家のお酒が飲みたい。今日は冷酒がいいな」

颯太は眉をあげて身を屈めると、エレナの瞳を覗き込んだ。

「では、食材を買って、料理しながら家で飲みますか?冷蔵庫に、冷酒が冷えてますから」
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