~Still~
数人いるバーテンダーは、誰もがエレナから離れた場所で接客中である。

「くたばれ!」

最後に何か言ってやれと思い、出た言葉がそれであった。

そして、残り少ないキールロワイヤルを飲み干そうと顎を上げた瞬間……。

エレナの眼の前に、スッと人が現れた。

「……っ!!」

エレナは、もう少しで悲鳴を上げそうになったが、楽しげな店内の雰囲気に救われた。

嘘でしょっ?

恐いんだけどっ!

どう考えても歩いて近づいて来たのではなく、最初からカウンターテーブルの下、エレナからは死角になる部分にしゃがみこんでいて、突然立ち上がったような感じであった。

私の、目の錯覚でなければ。

……なに、この人!…不気味。
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