~Still~
「うん。私、日本が好きなの。母の母国だし。前回は母と来たのよ」

颯太は生ハムを皿に取りながら、さりげなく聞いた。

「あの、健斗という男性とは……その」

エレナは颯太を見上げた。

「……気になる?」

「付き合ってたんですか?」

「……いいなと思ったのは確か。でも、付き合うまでいってない」

颯太は、胸が焦げる思いがした。

初めて店に来たエレナを見たのは確か半年前だった。

六年ぶりに見たエレナは相変わらず美しく、すぐに分かった。

エレナは、健斗という男に肩を抱かれながら店の中央のテーブルについていた。
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