~Still~
健斗は、美しいエレナといるのがよほど誇らしかったのか、しきりと辺りを見回して、他の客の反応を見ていた。

それからあと一度、ふたりで来たのを最後に、エレナは来なくなった。

ただ健斗だけが度々来ては、カウンターのバーテンダーにエレナが来店したかどうかを確認していた。

エレナが来たらすぐに連絡がほしいと、健斗は携帯番号をバーテンダーに渡したという報告が颯太の耳に入っていた。

勿論、エレナが来店してもバーテンダーが健斗に連絡することはなかった。

また颯太も、あれ以来エレナとは会えずにいた。

エレナは物憂げな眼差しで呟くように言った。

「彼は……私の中身なんかどうでもいい感じで……私も、なんか、彼とは合わないなって」

エレナは俯いた。
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