恋のデザインは色鮮やかに。
「だけど、秋野が迎えに来たらそっちに行くんだろ?
ここに残るつもりはないのか?」


「それは…今はまだ3カ月経ってないですし…。
戻るつもりはないですけど…。

ずっとタワーワークスにお世話になるというのは…」


青山さんは時々こういう質問で私を困らせる。


「はぁ。
あのイラストレーターにしてこの担当ありだな、まったく。

大手に話を持ちかけられたら、普通なびくだろ。
なのに秋野も成瀬さんも、イクタデザインを離れようとしない」


そういえば青山さん、レイさんにもタワーワークスに引き抜きの話をしてるんだっけ。


ずっと断られてるらしいけど…。


「イクタデザインは、こんな私を拾ってくれた心優しい会社ですからね。
社長にも、レイさんにも恩返ししないと」


「恩返し、ね…」


そう。
あの時、レイさんに担当になれと言われてなかったら、私は今頃どうなっていたのだろう。


どこにも就職できなくて、両親にも大学にも迷惑をかけていたはず。


だから私がすべきことは、イクタデザインで汗水流して働くこと。


いや、すべきではなくて、そうしたいと心から願う。
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