茜空にあなたとあたし
影のあたしの頭の上から何か出てる。


「え?」


あたしの頭の上、碧くんがピースしてる。

「え?何…?」

「アリ…」


アリ…?

「ちょっと…いくら小さいからって、アリほどではないよ?」


わざとふくれっ面で碧くんを見た。


「ん…」


碧くん笑ってる。


碧くん…
あたしの周りだけ酸素がないみたい。

息ができなくなる。

時が止まる…


碧くんの声、碧くんの瞬き、碧くんの頬っぺたのえくぼ…


碧くんのひとつひとつが大切。

碧くんのひと言ひと言が…宝物。


あたしの恋心は底なし。

碧くん専用スペースが果てしない。


「篠田さん…さっき…朔に、篠田さんを送ること言わなかった。ごめん…」

「ど、どうして?謝るの…?」


碧くんが謝る理由がわからない。


「朔、篠田さんのこといつも心配してる…大切なんだと思う」

「朔が?いつも…あたしのことを馬鹿にしてる朔が?」


うんと頷く碧くん。


「違うよ…朔はね、違うの。責任を感じているの。あたしが…中学の時…」


あたしが中学2年の時、朔がちょっと悪いグループとかに顔を出すようになって。

そのグループの中の人の彼女が朔を好きになったとかで…

あたしには全く関係ない話だけど。

全く関係ないのに…


その人がある日学校帰りのあたしを待ち伏せていた。様子がおかしいし怖くなって走った…


もちろんすぐ追いつかれて、腕を掴まれた。

「あたし声だけは大きくて、『わぁぁ』って叫んだら、その人も動き止まっちゃって…近くを通りかかった人に助けられたの」

朔はそれ以降そのグループと関わることもなくなって、その代わり中学の間、毎日あたしと一緒に帰った。


「でもね…あたしは朔を縛り付けたくないの。朔を…自由にしてあげたいし、あたしも、そんなことにとらわれたくない。明るく楽しく…ね⁈」


影で碧くんにくっついた。






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