俺たちの妹・2
次の日、俺は一人で大学へ行った。
歩いていると、声を掛けられた。
「葵、おはよ」
「あ、楓おはよ」
「葵さ、何かした?」
「ん?何を?」
「麗奈に何かした?」
「あぁ……本人には何もしてないけど、ちょっと告げ口しただけ」
「……………誰に?」
「みぃのお父さん」
「……………みぃちゃんの親父さん?」
「そ。みぃは城之内コーポレーションの令嬢なんだよ。彼女はみぃを苦しめた存在だから少しくらい痛手を負ってもらってもいいかなと思ってさ」
「葵…………相当頭にきてたんだな。
みぃちゃんは品があるし、どこかのご令嬢かとは思ってたけど、城之内コーポレーションだったのか…納得だな」
「でも、どうして楓が俺が何かしたって知ってるの?」
「結構話題になってるよ」
「話題?」
「深山商事との取引を止めてる会社が結構増えたって……」
「そうなの?………おじさん、他にも声かけたのかな……」
「だから、今結構ヤバいらしいよ。深山商事」
俺の告げ口によって一つの会社を窮地に追いやってしまった……
でも、後悔はない。
みぃを苦しめた存在は許せないし、取引を止めたのは大人たちの判断だし……
俺の情報がきっかけだったかも知れないけど、いずれは同じ様な事になってたと思う。
あの彼女のご両親だしな……
なんて思ってしまう俺は、酷い人なのかも知れない。
俺が周りに優しくいれるのは、みぃが穏やかに過ごせているのが条件なのかもと思った出来事だった。