俺たちの妹・2
カチャ……

トイレのドアが少し開いた音がした。

振り返ると、彩さんが、トイレの壁にもたれていた。


「彩、頑張ったな……」

そう言って、かな兄が彩さんを抱き上げた。


「………相当だね」

「うん………」

葵の言葉に頷かずにはいれなかった。


「葵?悪いんだけど、このまま車に乗せてもいい?」

「うん。前と後ろとどっちがいいかな?」

「………多分どっちに座っても気分悪くなると思う」

「じゃぁ、後でみぃと乗ってもらおうかな」

「分かった。車の中では私が見ておくね」


「よろしく頼むな」

「任せて」

かな兄は、彩さんを車に座らせると、頭をそっと撫でた。

本当は一緒に行ってあげたいんだと思うん………


彩さんを見ると、ギュッと目を瞑って、既に何かに耐えてるみたいだった。

「彩さん?」

「……………吐きそ」

「葵。バケツある?」

「あるよ」

そう言って渡されたバケツには、袋が付けられていて、準備万端だった。


私もよく気分が悪くなるから、常備してくれてるんだろうな………



葵からバケツを、受け取って、彩さんの口元に持って行き背中をさすると


ケホケホ、ケホケホ

と咳き込み出した。


「彩、我慢しなくていいよ」

かな兄がいつの間にか彩さんの隣に居て、安心させていた。


オェェェ……


彩さんは車に移動しただけで戻してしまった………



「葵、悪いけど彩の担当医に今の事話してくれる?この調子だと毎回病院に行くだけで吐いちゃう事になる………
彩の負担は出来るだけ減らしてあげたいんだ……」

「分かった……」

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