冷蔵庫サイドストーリー
「あっ」


シグマのその声と同時に、トマトの種が弾け飛び、僕の頬に冷たい感触と共に着地した。


「ごめんなさい」


頭を下げ妙に可愛く素直に謝るものだから、僕は黄緑色のものを親指で拭い取りながら、猛烈に腹立たしいのをなんとか堪えた。

指と頬を差し出されたおしぼりで拭きながら、ため息が出る。

隣室で隠しカメラの影像を見ている佐田は、今どんな顔をしているだろう、と思うと余計腹が立つ。

絶対、笑っている。
そうに違いない。



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