そんなに見ないで、
これは清弥の癖だ。
彼は童顔なせいで、高校生のように見えてしまうが、こう見えて立派な成人男性だ。
しかめっ面で大きく深呼吸をするのは、成人までして簡単な事で怒りたくない、という大人の余裕を見せたいのだろう。
だが、彼は恐ろしく短気だ。
「姫さん、あんたが入学するんだ。
俺も入学しないわけにはいかないだろう?」
「先生になるとかなかったわけ?
まず、私と同じ学年になるのなら、姫呼びはよしてよね。」
「なんだよ。あんたが言ったんだろう?私の事は姫とお呼びなちゃい!って。」
清弥はポケットに手を突っ込んで私の子供の頃の真似をした。
確かに言った。
けど!それは3歳の頃の話だ。
そのころは一端にお姫様に憧れもした時期だったが、
そういう時期だっただけ!!
今はそんな可愛いものに憧れる時期は、もう終わったのだ。
「もういいわ。」
「じゃぁ、なんとお呼びすれば?」
「なんでもいいわ。自分で決めてちょうだい。」
そう言うと、彼女は校門をくぐり、
「入学式、会場はこちら」
という順路にそって歩いて行った。