そんなに見ないで、
「わざわざ来なくてもよかったのに、」
「え?」
「わざわざ私のためにこんなとこに来なくても良かったのよ?命令したわけでもないのに。」
清弥はケーキを食べる直前で手を止めて、考え込んだ。
「そりゃ、姫さんは御主人ってこともありますけど。これは、俺の……、真心?ですよ。」
「真心ね〜、」
麗は綺麗なスプーンさばきでムースをたいらげると、紅茶をすすった。
「真心なんて見えないもの、信じられないわ。」
「子供ですね〜、」
麗はむっとして紅茶をカチャンと音を鳴らして置くと、清弥は気にしない様子で半分になったケーキを渡した。
「真心っていうのは誰の心にもありますし、それがないと、この先友達が出来ませんよ?男ならいらないと思いますがね?」
満面の笑みで清弥は言うと、麗はイライラとしてケーキを受け取った。
「なに言ってんのよ。友達なんて簡単にできるわ。」
「意地っ張りですね〜、本当は身も心もガチガチだったくせに。」
「うるさい!」
八つ当たりのようにケーキを早く食べ終えると、紅茶を一気に飲んだ。