今日も鈍感な君に振り回されて




『……な、なんで諭がいるの?

 てか、暗い!暗い!
 暗いの無理!電気電気!』



由香は焦った様子で席を立ち上がる。


その時に響く、ギィ…という音に敏感に反応する由香。




『ひゃ…!

 え、何?怖い怖い…!
 音も怖いけど暗いのいやー!』



焦る、を通り越した、そんな感じなんだろう。





『諭、電気!
 電気つけてよ!

 暗いのいや!怖いから!
 電気つけて!』



『バカ!
 今、電気なんかつけたら警備員に見つかるだろ!

 ほら、携帯で俺の足元照らすから、お前も明るい方に歩いてこい!』




『……ひっく。うぅ~…。
 諭、私が行くまで離れないでね!?』




『あ~、分かった分かった。
 お前がここまで来たら置いていくから』



『え!ひどい!
 いいもん、いいもん!
 たどりついたら腕、掴むから!』



暗くてあまり由香の表情がハッキリとは見れないけど。


由香の声から、なんとなくだけど今の由香の表情が分かる気がする。





『お前さ、てか普通にバカだろ?

 なんでわざわざ俺の席で寝てたんだよ?
 
 てか、人の席で寝てんじゃねーよ』




数秒の間があって、

由香が俺の元に辿り着く。




『だって…。

 諭、私のこと、避けてるじゃん…。

 でも何度考えても、何回頭を捻っても諭が怒ってる理由、分かんなくて…。

 諭の席に座ったら、諭の考えてることが分かるかな…と思って試してみました…。

 でもやっぱり分からなくて…気がついたら寝ちゃったみたいで……。

 でも諭が来てくれて良かったよ、ありがとう』



『ばーか!
 俺の考えてること、俺のお前への想い、バカで鈍感でガキなお前に簡単に分かる訳ねぇーだろ?

 てか、エスパーでもなんでもないんだから、口で伝えなきゃ分かんねーよ』




そうなんだよな。


そうなんだよ。


誰も人の想いに簡単に気付ける訳じゃない。

誰も人の想いを簡単に理解出来る訳がない。



だから。

きちんと口で、言葉にして、想いを伝えなきゃいけないんだよな…。
 


特に、この女には!





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