愛の答
冬の灯
陰暦同様、その日は霜が降りた。
吐く息も白く、寒さが肌に刺さる。
天気予報によると今日は夕方から雪が降ると言っていた。
拓、寒くない?沙梨ちゃん、元気?私は・・・。
拓の判決が出た後、動いたのは拓の両親だった。
息子の罪に対する判決を不服として控訴したのだ。
当然私も立ち上がった。
どんな状況に陥ろうと、最後まで戦い抜いて見せよう・・・。
そう強く願った私、そして拓の両親。
しかし、拓はその戦場に立つ事はなかった。
拓は悔しがっていた。
今回の事は全て島津にやられた事だと。
刑務所に入る前に、どうしても一度話したいと。
つまり・・・拓自身、傷害罪の罪は認めていた。
どんな状況だったかなんて、拓の前では意味を持たない。
拓の頭の中は・・・島津の事で一杯だった。
何度も何度も私は島津の連絡先に電話をしたが繋がらず、
昨日は直接警察署に行った。
しかし、私の姿を見た島津が裏で工作をしたのだろう。
『すみません。島津は今出ておりまして』と。
もう泣き疲れた。
なるべく笑っていたいけど、自然と出てくる涙。
この数日で流した涙は一体どれくらいだろう?
どうしてこんなに苦しまなければいけないのだろうか?
全て、繋がっている気がした。
私が今泣いている事も運命。
『島津はまたバッくれか?ちくしょう。あいつだけは絶対許せねぇ』
本人意思により、控訴の取り下げが認められた。
刑務所行き三日前に、拓と面会した。
拓の頭の中は憎しみで一杯のようだった。
非通知の電話の事を言おうか迷ったけれどもやめておいた。
一つだけ断言させてもらいたい。二十二年生きてきた私だけど、
今日ほど人を殺してやりたいと思ったことはない。
拓との面会から帰ってきた私は、夕食を作るため台所に向かった。
その途中、
『深雪さん。貴方宛に手紙がきてたよ。テーブルの上に置いてあるから』
そう拓のお母さんに言われた。
私に?・・・誰が?
『確か・・・』
拓のお母さんは歯切れの悪い言葉で続けた。
『あの・・・警察官の』
『!』
島津だ。
間違いない。
私は直ぐ様テーブルの上に置いてあった手紙を手に取った。
・・・やっぱり。
送り主は島津。
心臓が倍速で鼓動を打っているのが分かった。
何?今更手紙?
私達がどれだけ貴方を恨んでいると思っているの?
怒れる感情に陥ったが、手紙を読まない事には始まらないと気付き、
椅子に座り封を切った。
手紙の内容はこのようなものだった。
【前略省略。深雪さん。幾度も私の携帯電話に連絡を入れていますが、
もう、その行為はお止め下さい。
私共一同貴方達夫妻に降り掛かった不幸は、心痛ませております。
しかし、そこに正義はあるのでしょうか?
職業柄、何が正しいのか。何が間違っているのかと、
すぐに区別をするのですが、今回の件に関しては正義も悪もないと、
思い直しました。ですから、どうか納得の方をされて、
ご主人の拓也さんの帰りを待って頂きたいと思います。
尚、日々ご心配されている沙梨ちゃんが生活している施設の住所を別紙に添えておきます。以下省略】
『・・・』
気付いた。
私はその時気付いてしまった。
島津の書いた手紙の内容が、頭の中から一気に抜けてしまうくらい重要な事に。クシャ!と、手紙を両手で潰した。
間違いない。
何でこんな事に気付けたのだろう?
分からない。
分からないけど、私の脳裏が全てを繋げた。
『ふざけないで!私は貴方を絶対に許せない!』
吐く息も白く、寒さが肌に刺さる。
天気予報によると今日は夕方から雪が降ると言っていた。
拓、寒くない?沙梨ちゃん、元気?私は・・・。
拓の判決が出た後、動いたのは拓の両親だった。
息子の罪に対する判決を不服として控訴したのだ。
当然私も立ち上がった。
どんな状況に陥ろうと、最後まで戦い抜いて見せよう・・・。
そう強く願った私、そして拓の両親。
しかし、拓はその戦場に立つ事はなかった。
拓は悔しがっていた。
今回の事は全て島津にやられた事だと。
刑務所に入る前に、どうしても一度話したいと。
つまり・・・拓自身、傷害罪の罪は認めていた。
どんな状況だったかなんて、拓の前では意味を持たない。
拓の頭の中は・・・島津の事で一杯だった。
何度も何度も私は島津の連絡先に電話をしたが繋がらず、
昨日は直接警察署に行った。
しかし、私の姿を見た島津が裏で工作をしたのだろう。
『すみません。島津は今出ておりまして』と。
もう泣き疲れた。
なるべく笑っていたいけど、自然と出てくる涙。
この数日で流した涙は一体どれくらいだろう?
どうしてこんなに苦しまなければいけないのだろうか?
全て、繋がっている気がした。
私が今泣いている事も運命。
『島津はまたバッくれか?ちくしょう。あいつだけは絶対許せねぇ』
本人意思により、控訴の取り下げが認められた。
刑務所行き三日前に、拓と面会した。
拓の頭の中は憎しみで一杯のようだった。
非通知の電話の事を言おうか迷ったけれどもやめておいた。
一つだけ断言させてもらいたい。二十二年生きてきた私だけど、
今日ほど人を殺してやりたいと思ったことはない。
拓との面会から帰ってきた私は、夕食を作るため台所に向かった。
その途中、
『深雪さん。貴方宛に手紙がきてたよ。テーブルの上に置いてあるから』
そう拓のお母さんに言われた。
私に?・・・誰が?
『確か・・・』
拓のお母さんは歯切れの悪い言葉で続けた。
『あの・・・警察官の』
『!』
島津だ。
間違いない。
私は直ぐ様テーブルの上に置いてあった手紙を手に取った。
・・・やっぱり。
送り主は島津。
心臓が倍速で鼓動を打っているのが分かった。
何?今更手紙?
私達がどれだけ貴方を恨んでいると思っているの?
怒れる感情に陥ったが、手紙を読まない事には始まらないと気付き、
椅子に座り封を切った。
手紙の内容はこのようなものだった。
【前略省略。深雪さん。幾度も私の携帯電話に連絡を入れていますが、
もう、その行為はお止め下さい。
私共一同貴方達夫妻に降り掛かった不幸は、心痛ませております。
しかし、そこに正義はあるのでしょうか?
職業柄、何が正しいのか。何が間違っているのかと、
すぐに区別をするのですが、今回の件に関しては正義も悪もないと、
思い直しました。ですから、どうか納得の方をされて、
ご主人の拓也さんの帰りを待って頂きたいと思います。
尚、日々ご心配されている沙梨ちゃんが生活している施設の住所を別紙に添えておきます。以下省略】
『・・・』
気付いた。
私はその時気付いてしまった。
島津の書いた手紙の内容が、頭の中から一気に抜けてしまうくらい重要な事に。クシャ!と、手紙を両手で潰した。
間違いない。
何でこんな事に気付けたのだろう?
分からない。
分からないけど、私の脳裏が全てを繋げた。
『ふざけないで!私は貴方を絶対に許せない!』