伸ばした腕のその先に
一宵  希(こいねが)った声
(聞きたいよ)
 夢の中、私は痛いほどに青一色の空へと向かって、ただその言葉を叫び続けていた。
 陽くん、陽くんと、その喉から言葉を搾り出す。
 けれど、夢の景色は何も変わりはしない。

(陽くん)
 涙が堪えられなくなってくる。顔を両手で覆えども、滴る水に止まる術はなく落ちていく。
 涙腺はそのまま緩み、私の瞳からは幾重にも涙がこぼれていってしまう。
 人工的な青に滴は呑まれ、涙でできた水溜りは青色に染まっていく。

(もう一度、聞きたい……)
 私は虚しいほどに青一色の空に向かって、ただその言葉を叫び続ける。
 心に深い痕を残す、その温められた刃のような声を聞きたいと。
 今すぐ彼に、彼の声に縋りたいと。おうおうと哀しく声をまきちらすのだ。
 でも、それは叶わない。
 
(聞き……たい、よ……)
 わかっている、わかってはいるはずなのに……私はがむしゃらにマクの内側から、気持ち悪いほど青い空に手を伸ばし続けていた。
 それでも、私の手は、決して空には届かなかったのだ。


  第一宵  希った声
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