俺様社長の飼い猫
わかっている。何時までも、逃げてちゃいけない事も。

でも、怖い…あの、アパートに帰る事が。

『彼氏』の待つ、あのアパートに帰る事が。

「…また、泣いてる」

その声が頭上に降ってきたのと同時に、温かい腕が私を包み込んだ。

涙を拭う事も忘れて、その声の主を見上げた。

「紫音、さん…」
「…そんなに苦しそうな顔で、泣かないでくれ」

紫音は、私をぎゅっと抱き締めた。

その温もりに安心して、より一層涙が溢れる。

私は紫音にしがみついた。

それに応えるように、紫音も私を抱き締める。

…どうして、紫音の腕の中は、こんなにも、安心して、落ち着くんだろう。
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