俺様社長の飼い猫
オレの足は、迷うことなく、2人の下へ。

「社、社長!」

安堂の言葉などお構いなしに。

…突然のオレの登場に、当然驚いている二人。

スズは、オレを見て、小さく首を振って見せた。

…ここは会社、そんな事は分かっている。

だが、このままスズを放って社外に出る事など考えもつかなかった。

「…東郷社長、私どもに何か?」

スズの横にいる男が、オレに言い終えをかけてきた。


「…名前は?」

無表情に、男に問いかける。

「…営業部部長、柏木聖司と言います」

営業部部長、柏木。仕事の出来る男だと噂は聞いた事があった。

…だが、スズへの態度は、誰が見ても許せない。


「営業部の部長が、こんな所で油売ってる暇があったら、営業の一つでも取ってこい」

「・・・」

オレの言葉に、返す言葉がないのか、黙った柏木。

「さっさと行け」

少し睨んでそう言えば、柏木はオレに一礼し、その場を去った。

「・・・しゃ、社長、ありがとうございました」

消え入りそうな声で、そう言ったスズ。

・・・握りしめたその手は、明らかに震えていた。
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