俺様社長の飼い猫
《スズside》

紫音が私を助けてくれたあの日以来、柏木部長は私に近づく事をしなかった。

…もう、私の事を諦めてくれたのか。

…やっと、あの人から解放される時が来たのか。

そう思うと、肩の力が抜ける思いだった。

「…」

仕事が終わり、電車で最寄駅まで行き、徒歩でマンションまで向かう。

マンション前、私は言葉を失い足を止めた。

「…やっと、見つけた」
「な、んで」

恐怖に駆られた私は一歩後退する。

「…スズ、家に帰ろう」

そう言って、優しく微笑んだのは。

「…柏木、部長」

「…聖司、そう呼んでくれないのか?」

…足の震えが止まらない。
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