俺様社長の飼い猫
「「・・・・」」

リビングに向かい合って座る私と、…安堂。

お互い、何を話すでもなく、掛け時計のカチカチと言う音だけが部屋の中で響く。

…なぜ、こんな事になったかといえば、私が一人で大丈夫だとサッサと答えなかったのが原因。

私を心配して、紫音が秘書の安堂をここに置いて行ったのだ。


でも。

こんなに、重苦しい空気になるくらいなら、一人でいた方が幾分よかった。

「あの・・・コーヒー入れますね」

いたたまれなくなった私は、ソファーから立ち上がると、キッチンに向かう。

「「・・・あ!!」」


・・・・。

緊張のあまり、スリッパが、何かに引っかかり、つまずいてしまった。

豪快に転びそうになった私を、安堂は間一髪のところで助けてくれた。

「す、すみません」

「・・・はぁ・・・そそっかしい人ですね」

「・・・・」

困惑の表情で、安堂を見上げれば、安堂はハッとして、私の腰から腕をのけた。


「…気をつけてください」

そう言うと、何事もなかったように、ソファーに腰を下ろした。
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