だって好きだから
八〇〇メートルの勝負
秋晴れの土曜日、誰もいないグランドに私と拓馬はいた。
いつもは饒舌な拓馬も、今は黙って芝の上でストレッチをしている。そんな彼に少しだけドキドキしながら、私は彼の近くで、同じように身体を伸ばしていく。
「一本勝負だよ」
私はそういった。逸る気持ちを抑えながら。
「わかってる」
拓馬はそう返してきた。少しだけぶっきらぼうに。
そんな、いつもとはちょっと違う私たち。
けれど、そんなことはお構いなしと、澄み渡った空では雲があまりにも穏やかに流れていて……遥か上の方、犬のような形をした雲が流れていく。
私はその様子を視界の端で捉えつつ、静かに大きく息を吸った。
そう、今私はとても緊張していた。
なぜなら、今から走る八〇〇メートルは、私の意地と、拓馬の恋がかかった勝負だったから。
いつもは饒舌な拓馬も、今は黙って芝の上でストレッチをしている。そんな彼に少しだけドキドキしながら、私は彼の近くで、同じように身体を伸ばしていく。
「一本勝負だよ」
私はそういった。逸る気持ちを抑えながら。
「わかってる」
拓馬はそう返してきた。少しだけぶっきらぼうに。
そんな、いつもとはちょっと違う私たち。
けれど、そんなことはお構いなしと、澄み渡った空では雲があまりにも穏やかに流れていて……遥か上の方、犬のような形をした雲が流れていく。
私はその様子を視界の端で捉えつつ、静かに大きく息を吸った。
そう、今私はとても緊張していた。
なぜなら、今から走る八〇〇メートルは、私の意地と、拓馬の恋がかかった勝負だったから。
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