だって好きだから
温かさと冷たさ、その二つが別々に渦を巻き、私の心を揺らしていく。
付き合うなら二番目に好きな人がいい、昔は良くわからなかったその意味も、拓馬のいる今なら痛いほどにわかってしまう。
好きだから、一番好きだから、いつか訪れる別れを恐れてしまう。嫌われるのが恐くなってしまう。
だから私は逃げるのだ。
拓馬は私の一番好きな人で、拓馬も私のことが好きだった。
そんな綺麗な思い出を残しておきたいから。
……もしかしたら、もうそんなことは叶わないのかもしれない。
それは、この八〇〇メートルを口にした瞬間から。
でも、だからこそこれは私の意地なのだ。
そんなことを望んでしまった私の意地なのだ。
「ごめんね」
私は独り言のようなそれを、後ろの拓馬に向かって口にした。
『負けられない』
すぐ後ろ、そんな声が聞こえた気がした。
私はそれを確かめる余裕すらなく、二〇〇メートルのコーナーを曲がっていく。
後ろの拓馬の気配が、また強くなった。
付き合うなら二番目に好きな人がいい、昔は良くわからなかったその意味も、拓馬のいる今なら痛いほどにわかってしまう。
好きだから、一番好きだから、いつか訪れる別れを恐れてしまう。嫌われるのが恐くなってしまう。
だから私は逃げるのだ。
拓馬は私の一番好きな人で、拓馬も私のことが好きだった。
そんな綺麗な思い出を残しておきたいから。
……もしかしたら、もうそんなことは叶わないのかもしれない。
それは、この八〇〇メートルを口にした瞬間から。
でも、だからこそこれは私の意地なのだ。
そんなことを望んでしまった私の意地なのだ。
「ごめんね」
私は独り言のようなそれを、後ろの拓馬に向かって口にした。
『負けられない』
すぐ後ろ、そんな声が聞こえた気がした。
私はそれを確かめる余裕すらなく、二〇〇メートルのコーナーを曲がっていく。
後ろの拓馬の気配が、また強くなった。