だって好きだから
 それは、陽が沈み、練習も終わったグランドでのできごと。
 グランド整備を終え、道具を一緒に片付け、「お疲れさま」いつもの言葉を交わす前に放たれた言葉、それが私を切ないほどに強く締めつける。

 さらに言葉は、空っぽの私の中を反響していく。つき合う、つき合う、拓馬と……私が。
 喉元が熱くなるのに、胸の中、肺の辺りが冷たくて、嬉しいのにとても苦しくて、
 私は今にも掻き消えそうな声で、
「ダメ、だよ」
 そう口にしていた。

「どうしてだよ!」
 拓馬は強めの口調でそういった。
 きっと、それは彼が私の気持ち、拓馬のことを好きだという想いを知っていたから。
 けれど、私は拓馬から退くように言葉を紡ぐ。
「もう私たち、半年くらいで卒業だし」
「大学生になってもつき合えばいい」
「遠距離は無理だよ」
「なら、この半年だけ――」
「歯止めが……きかなくなっちゃうよ」

 そしてそのまま言葉は止まり、私たちの間には少しずつ夜の気配が溜まっていく。
 そこに拓馬と私の寂しさや焦り、苦しさが溶け込んでいき、それが私たちにまとわりついていくようだった。
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