だって好きだから
 そうして、そのまま私と拓馬は今日を迎えている。
 いつもと似たような言葉を交わすのにどこかぎこちなく、
 そのぎこちなさは休日に学校に来ていることとはまた別の、もどかしい何かのせいだった。

 私は靴ひもに手を伸ばし、解けぬように固く結んでいく。
 ひもが、私の決心が決して緩んでしまわぬように。固く、固く。

 ふと、視線を空へと向ける。
 目に映る、どこまでも澄んだ蒼空が少しだけ妬ましく、その中で私の頬を撫ぜる秋風がちょっとだけ愛おしかった。
 靴ひもを結び終わった私は意を決して立ち上がり……スタートラインに、すでに準備を終えていた拓馬の隣に並んだ。
 そして、「よぉい、GO!」拓馬の掛け声と共に、
 私たちの想いを乗せた八〇〇メートルはあまりにも静かにスタートした。
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