だって好きだから
 身体の軸を前に傾け、その重みを足全体で捉えていく。

 いつもより身体は重い。
 それは、拓馬への想いが私に詰まりすぎているからかもしれないし、単に疲労のせいかもしれない。
 ただ確かなことは、地面を蹴り上げるパサついた土がほんのりと舞い上がり、私の走った軌跡となっていくことだけ。

 タイミングを合わせた腕振りで、私はさらに速度を上げた。
 私と拓馬の間は〇.六メートル。それが、その時の私と拓馬の距離だった。
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