だって好きだから
(拓馬?)
 私は心の中で拓馬を呼ぶ。グランドを一周、四〇〇メートルを過ぎたあたりで後ろの気配を探る。
 後方に感じる拓馬の気配は先ほどよりも遠く、拓馬との差がまた少し開いていることを悟らせる。そして多分、その距離は二.四メートル。

 風の音、私の呼吸、拓馬の足音。それらのすべてがそこに入り乱れていた。
 私は必死に息を吸いながら、顔を歪めるように笑った。
 見えていなくとも何となくわかってしまう、その事実が何とも可笑しくて……どこか寂しく胸に響いていく。
 二.四メートル、それは……私と拓馬が一緒に駅まで帰るときの距離だった。
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