午前0時の恋人契約
自宅を出て、やってきたのは港区は青山の街。
人通りはあれどどこか閑静なこの街は、服屋さんやカフェ、様々なお店が立ち並び、けれど騒々しさがなくて私の好きな街のひとつだったりする。
青い花柄のトップスに、白いミモレ丈のスカート、そんないつもとあまり変わらぬ格好でちらほらと人の行き交う通りを歩く。
よく行く服屋さんを覗けば、そこには飾られた淡い水色と白のバイカラーのワンピース。
「あ、かわいい……」
けど裾の広がったデザインが、少し幼いかな?貴人さんの隣を歩くなら、もうちょっと大人っぽいほうが似合うかもしれない。
って、私!なに普通に貴人さんのこと考えてるの!
隣を歩くなら、ってそんな想像までして……自分で考えて恥ずかしくなってしまった。
妄想を振り払うようにワンピースから目をそらし、お店の前を通り過ぎる。
ダメだ、休日まで貴人さんのことばかり考えている。レンタル彼氏、分かってる、そう散々言い聞かせているのに……あぁ、もう。
気を取り直し、今度は近くの本屋さんに寄り店頭の雑誌にパラパラと目を通す。
ちょうど目にとまった一ページ、それは『私のおすすめセルフケア』というプロのモデルさんや読者モデルの女の子が自身のお気に入りのケアを紹介するというもの。
その中にあるひとつ、女の子が紹介しているビタミンのサプリメントに見覚えがある。
確かこれ……うちの店舗で一時期かなり推してたものだ。
小さなメーカーの商品だからって上層部は仕入れするのを躊躇ってたけど、貴人さんが『どうしても』って説得して入れて、そしたら爆発的に売れたんだよね。
本当、物を見極める目がある、すごい人だ。
って、はっ!また貴人さんのこと考えてた!!
気付くとまた頭の中に浮かぶ姿に、パンッと雑誌を閉じた。