午前0時の恋人契約
「ただの彼氏なら、誰にだってなれるわ。けど、そうじゃない。貴人を含めうちのお店の子たちは全員、『女性の人生を変えるくらい最高の彼氏』になるの」
ただ隣を歩くだけじゃない。言葉で、想いで、人生を変えるくらい、最高の彼氏になる。
それは、彼も同じ。
「貴人も誰かにとってそんな存在になりたくて、やってるんじゃないかしら。あくまで、アタシの予想だけど、ね」
桐子さんは、そう小さくウィンクをすると、またチーズケーキを一口食べた。
貴人さんも、誰かにとっての最高の彼氏になるために……。
そう思うと、彼のあのまっすぐな言葉の理由が、少し分かった気がした。
……自分で知りたくて聞いたのに、胸が小さく痛む。
彼の真っ直ぐな言葉。それは、一人の人としてじゃなく“最高の彼氏”として発せられたものだったのかな。
貴人さんが私の彼氏で、私が貴人さんの彼女だから、くれた言葉?
そう思うと、嬉しいのに心は苦しくて、段々と欲張りになっている自分に気付く。
その言葉が心からの想いだったらいいのに、なんて。ずうずうしいことを、願ってしまう。