午前0時の恋人契約
「ずいぶんご機嫌だね、なにかあったの?」
「いやぁ、昨日日曜日だったじゃないですか。それで、久しぶりに彼女とデートして充電満タンなんですよ〜」
そういえば、津賀くん彼女いるって前に言っていたっけ。
久しぶりに会えて嬉しかったのだろう、恥ずかしげもなくノロケる津賀くんの顔は幸せでいっぱいだ。
「やっぱ恋っていいですよねぇ、世界がキラキラーってするっていうか、毎日が潤うっていうか……」
なんだかその気持ちは、今の自分に近いようにも感じられ、私も笑って頷いた。
「……うん、そうだね」
キラキラ、する。恋って、いい。
前まではそう思えなかったけど、今は純粋な気持ちで頷ける。
そんな私に津賀くんは少し驚いた顔をしたかと思えば、なにかを察するようにニヤーと笑う。
「おやおやぁ〜?市原さんなんか珍しい反応じゃないですか〜。あれ、もしかして、あれ〜?」
「え!?い、いや、別になにもないよ!?」
し、しまった、顔に出ていた!?
からかうようなその言い方に、頬を赤くして否定すると、津賀くんは深く聞きはしないものの、からかうように笑ってひやかす。
「いやぁ、市原さんも意外とちゃっかり……あ!意外で思い出した!」
「へ?なにを?」
固まってニヤニヤしてハッとして……とコロコロと表情を変える津賀くんは、辺りをキョロキョロと見渡し誰かがいないことを確認すると、私に肩を組んで顔を近づけ、ひそひそと声を潜めた。
「昨日俺見ちゃったんですよ……岬課長が、彼女といるの!」
「え、えぇ!?」
か、彼女って……私のこと、だよね?
昨夜街で見られていたんだ、これはまずい……!
『見ていたの!?』という思いから出た驚きの声を、『そうなの!?』という意味で受け取ったのだろう、津賀くんはひそひそと話を続ける。
「彼女の方はよく見えなかったんですけど、岬課長が手つないで笑ってて、もう超ビックリしちゃいましたよ!噂とかなかったけどあの人もそういう相手いるんだなーって」
「へ、へぇ〜……」
よかった、私の方は見えていなかったんだ……。
私と貴人さんがいるのを見られていたらと思うと、上手く否定は出来ずバレてしまう自分が簡単に想像ついた。