午前0時の恋人契約
「あ……ここ、ですね」
貴人さんとふたり足を止めたのは、『パークハイヤー新宿』と書かれた大きなホテル。
高い建物の多い新宿の街の中でも一層際立って高いこのホテルは、地上60階はありそうなガラス張りだ。
一歩中へ足を踏み込めば、ラウンジには傷ひとつない革張りのソファと、光る床、ビシッと真っ白い制服を着こなしたホテルマンたちが出迎えた。
「お、おう……えらい高そうなホテルだな」
「そ、そうですね……」
先ほどまでの空気とは一転、予想以上に高級感溢れるホテル内に私も貴人さんも少し引き気味で苦笑いをこぼす。
そんな素の表情に、いつもの貴人さんだ、とほんの少し安心した。
天井のシャンデリアのあかりを反射させる床をコツコツと歩きながら、奥のエレベーターに乗り、目的地である40階へ向かい登っていく。
エレベーターからは外の景色が見えるようになっており、上昇していくほど先ほどまで自分たちが歩いていた街は遠く、小さくなっていった。
一面に広がる夜景は、一番最初に貴人さんと食事をしたレストランで見た夜景と記憶の中で重なり、この心を一層強くする。