午前0時の恋人契約
「……前からずっと、見てたんだよ。お前を」
私を、見て……た?
だからわざわざ、レンタル彼氏のフリをして、私に言葉を、勇気をくれたの?
驚きと嬉しさで、頬は染まり小さく涙がにじむ。
「あの……昨日電話で言ってた、条件、っていうのは」
まだ実感がないまま問いかけると、貴人さんは『そこも聞かれてたか』と言いたげに苦笑いをする。
「……最初俺がレンタル彼氏をするって話になった時に約束したんだよ。俺は給料を貰わない代わりに、全てが終わったらあいつが知ってる奴の中で一番信頼できるいい男をすみれに紹介するって」
私に、男の人を……?
「俺みたいな、優しくも出来ないような男より、優しくて安心できるような男を紹介して……お前が、確実に幸せになれるように」
抱きしめていた右手で、愛おしむようにそっと頬を撫でる彼が『条件』と言って願ってくれていたのは、私の幸せ。
優しくもできない、なんてそんなことないのに。
私にとって、優しくて安心出来る人は、あなたしかいないのに。
知らなかったとはいえ、一度でも彼を疑った自分が恥ずかしい。