午前0時の恋人契約
『市原さん?あぁ、彼女ならさっき契約していったわよ。しかも10日間パックで』
ところが、そのケバケバしい顔から言われたのは耳を疑うような言葉だった。
『は……はぁ!?あいつが!?』
『あら、知り合い?彼女、父親にお見合いさせられそうでそのために彼氏役が必要なんですって』
聞けば実は父親は社長で、娘の将来を心配してお見合い話を持ちかけているとのこと。
そのためにレンタル彼氏……ということは、よほど思いつめて悩んだ結果なのだろう。
『どんな彼氏でもいい、って好みひとつ言わなかったのよねぇ。うーん、どの子にしようか悩むわ〜……』
幸い、彼氏はまだ決まっていない。本人の好みもない。
俺が知る限り、レンタル彼氏の奴らはわりとその場限りの薄っぺらい言葉を並べる奴が多い。もちろん例外もあるけれど。
そんな適当に、その心に触れて一層心の殻を固くしてしまうくらいなら。
『俺がやる』
『は?』
『あいつ、うちの会社の後輩でな。どうせやるなら距離の近い奴がやったほうがいいだろ』
適当な言い訳で親を丸め込んで、自分がやると名乗り出た。