午前0時の恋人契約



『愛想もないあんたがやりたいなんて珍しい……でも言っとくけど給料は出さないわよ?』

『あぁ、いい。けど代わりにひとつ頼みたいことがある』

『頼みたいこと?』



給料はいらない。だけど、その代わりに頼んだ条件は、あらゆる交流関係を幅広く持つ親にだからこそ頼めること。



『この仕事が終わったら、知り合いの中で一番信頼出来る男をあいつに紹介してやってくれ』



あいつが心から安心して笑えるような、そんな相手を、紹介してほしい。



『いいけど……彼氏役にまで名乗り出るってことは、あんたがなりたいんじゃないの?』

『……別にそうじゃない。俺はただ、あいつに笑ってほしいだけだよ』



レンタル彼氏のフリ、なんて妙なこと。したこともないし、やる意味も分からない。

けれど、その代わりに願うのは彼女の心からの笑顔。



俺みたいな無愛想で上手く優しくしてやれない男には、出来ないから。

優しくて、誠実で、そんな相手が出来れば彼女も安心できるだろう。



いつも下を向く彼女が、上を向いて、胸を張って笑ってくれたらいい。そのきっかけに、なれたら。

そんな気持ちで、レンタル彼氏としてすみれとの日々を過ごした。





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