午前0時の恋人契約



「あれ……でもこんなところで行き会うなんて、奇遇ですね。どなたかと待ち合わせですか?」



会社から電車で来た先にある駅前で行き会う、なんてすごい偶然だ。



課長も誰かと待ち合わせ?あ、もしかして……彼女とか?

確か独身だったはず、と日頃周りの女の子たちが噂している話を思い出しながら問いかけると、岬課長は「あぁ」と頷く。



「19時に駅、って言っただろ」

「へ?」



誰に?いつ?一体なんの話?

意味が全く分からずキョトンとする私に、岬課長は至って冷静にスーツの内ポケットから名刺のようなものを取り出す。

反射的にそれを受け取れば、そこには『レンタル彼氏 mi amor 岬貴人』の文字。



『mi amor』って……あぁ、昨日行ったあのお店の……。

彼氏役の人もこうやって名刺とかあるんだ……でもあの社長さんの名刺とは違ってシンプルなデザインの名刺だなぁ……。



って、ん?んんん???



レンタル彼氏?岬貴人??

それって、え?どういうこと?



意味が分からず名刺と目の前の顔を何度も交互に見ると、彼はふふんと不敵な笑みを見せる。



「今日からお客様の彼氏役を受け持つ、岬貴人と申します」



私の、彼氏役を……岬課長、が……!!?



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