午前0時の恋人契約
「……ってことで、説明は以上。まだ時間はあるが、どこか出かけるか?」
「い、いえ……今日は、もうキャパオーバーといいますか、帰って少し状況整理をしたいといいますか……」
まさかのことがありすぎて、どこかに出かけたり恋人として食事を楽しむ余裕など、今日の私にはない。
そんな気持ちから断ると、それもまた予想の範囲内だったのだろう。彼はすんなりと受け入れ伝票を手に席を立つ。
「あっ、お金……」
「いい。俺が払っておく」
「えっ?いいんですか?」
こういう場合、当然自分が払うとばかり思っていたものだから、その行動は少し意外だ。
もしかして……ちょっと気遣って、くれているとか?
なんて、そんな小さな期待に思わず心は嬉しさを感じる。
「ご……ごちそうさま、です」
「どうせあとで代金と一緒に一括請求するからな、お前に」
「って、えぇ!?」
そういうことですか!?
驚き声をあげる私に、その顔はまた意地悪そうに笑ってみせる。
こんな人と10日間、なんて……大丈夫なのかな。
不安ばかりを胸に抱えて、彼・岬課長……もとい、貴人さんとの10日間が、幕を開けた。