午前0時の恋人契約
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?押し付けじゃなくて、手伝ってって言ってるだけだし。市原さんだって嫌だって言わないもんねー」
「えっ、えっと、あの……」
「市原さん優しいもんねぇ、これだけ頼んでるのにやってくれないとかないよねー?」
けれど、じろ、とこちらを見る彼女から漂うピリピリとした空気。
今にも揉め事になりそうなその雰囲気に、また私は変に空気を読んでしまう。
「わ……わかりました、大丈夫です」
小さく頷いた私に、目の前に並ぶふたつの顔は満足げなものと信じられないといった顔に極端に別れる。
「はぁ?市原さん本気で言ってるんですか?」
「う、うん……ちょっとくらいなら、手伝えるかなって」
「だよねぇ。ありがと市原さん、ヨロシク〜」
その結果に越谷さんはコロッと上機嫌になると、ひらひらと手を振りその場を後にした。
「ごめんね、津賀くん。ありがとう」
「まぁ、市原さんが大丈夫ならいいですけど……本当に大丈夫なんですか?」
「うん……大丈夫、頑張る」
腑に落ちない、といった顔でその場を去る津賀くんに、そこに残されたのは私ひとりと置かれた書類たち。
あぁ……私のバカ。
せっかく津賀くんが庇ってくれたのに、その優しさすらも無碍にするなんて。
……やっぱり、どんなに庇ってくれようとする人がいたとしても、自分自身の性格が変わらないと意味がないよね。
「……はぁ、」
今日も残業出来ないし、お昼休まずにやろう……。