午前0時の恋人契約
いちいち表情を伺って、機嫌を損ねないように、と空気を読むふりをして自身を守ってる。そんな自分が、嫌いだ。
けどそれでも、人に嫌われたり嫌な目を向けられることのほうが、怖い。
その度頭にちらつくのは、幼き日の、記憶。
カタカタカタ……、とキーボードの音が響く昼休み中のフロア。
そこには今日も私ひとりが残り仕事をしているだけで、他の人は全員お昼休憩へと出ている。
「……ふう、」
やっぱり、自分の仕事に加えて越谷さんの仕事をやるとなると量が多いなぁ。
まぁ、この分なら今日も定時にはあがれるはず。
うーん、でも目が疲れる……。
疲れた目を指で押さえ、ぱちぱちと瞬きをして休める。
ちょっと休もうかな、でも休んでいるうちにまた仕事が追加で来たらどうしよう。
「まーたやってるのか、このバカ」
「ひゃあっ!?」
悩んでいると、突然背後からうなじにぴたっとあてられる冷たい感触。
な、なに!?
驚き振り向けば、そこには缶コーヒーを手にした岬課長がいた。
……この前も同じようなことをされた気がする。
この人はちょっかいを出さずに普通に話しかけるということが出来ないのだろうか。
驚きうなじをおさえながら見る私に、彼は呆れた顔で私を見てパソコンへと目を向けた。
「昼休みは飯を食え、ってこの前も言っただろうが」
「す……すみません」
「結局そうやって無理するなら、津賀が言ってくれた時にちゃんと断れよ」
うっ……。
朝のやりとりを見ていたのだろう。もっともなその言葉に、当然反論出来ずに俯く。