午前0時の恋人契約



「すみません、彼女になにかノンアルコールを」

「えっ、いえっ、そんな……」

「苦手なもの飲んでも仕方ないだろ。甘えとけ」



そしてウェイターさんが手早く持ってきてくれたものは、ノンアルコールのカクテル。

シャーリーテンプルと言ってウェイターさんがワインと交換してくれたそれは、烏龍茶のような茶色にオレンジ色の混じった爽やかな見た目のドリンクだ。



わざわざ申し訳ない気持ちでそれを一口飲めば、先ほどのワインとはうって変わって、飲みやすい甘みとレモンの爽やかな酸味がほどよく、またつい顔がほころぶ。



「おいしい……」

「みたいだな。よかった」



私の気持ちはまた顔に出ていたのだろう。こちらを見る彼は、疑うことなくすんなりと納得する。



「すみません、わざわざ……」

「いいよ、別に。お前がアルコール苦手なのもよく分かったから、今度からこっちも考えるやすい。それに、こうやってひとつずつ知っていくんだよ」



こうやって、ひとつずつ。彼が私を知ってくれる。

……なんて、なんだか恥ずかしくて、だけどくすぐったい気持ち。

その気持ちを隠すように、またフォークとナイフを手に食事を再開させた。



厳しい中に真っ直ぐさがあるところは、いつだって変わらない。

だけどその瞳はいつもよりどこか優しくて、慣れないその穏やかさに、戸惑ってしまう。



「それにしても、お前は食べ方が綺麗だな」

「え?そう、ですか?」



綺麗、?

不意に振られたその話題に、ついきょとんと首を傾げる。


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