午前0時の恋人契約
暗い中で触れる手は、歩きながらつなぐものとはまた違う。
大きな手のひらから長い指先まで、指一本一本しっかりと意識する。
……あつい。
つなぐ手も、染まる頬も、あつい。全身の熱が上がっていく。
ドキドキ、しちゃうよ。
目の前がホラー映画っていうのがちょっと残念だけど……。
なんてことを苦笑いで思っていると、スクリーンに映るシーンは、突然わっと驚かせるような女性の幽霊のアップ。
その途端、重ねられた手はビクッと怯えたように一層強く私の手を握った。
……あれ。
この反応から察するに、やっぱり。
「……あの、貴人さん?やっぱり怖いの苦……」
「ち、違う!少し驚いただけだ!」
小声で必死に否定するものの、手を握る力は先ほどより強い。
……手を握った理由は、恋人とか関係なく怖いからだったんだ……。
自分の感じたドキ、と彼の感じたドキ、の違いに、つい笑ってしまう。
「おい、笑うな。本当に俺はただ少し驚いただけで……」
そう弁解しながらも、スクリーンに映った血まみれの女性に、またその手はビクッと握る手に力を込めた。
強がりというか、意地っ張りだなぁ……。
でも怖いの苦手なんだ。いつも堂々としてる彼を見ているだけに、その姿はちょっと意外。
そっか、苦手なんだ。
またひとつ初めて見る表情は、決してかっこいいとは言えない部分。
だけどそれを知って、少し嬉しい自分がいる。
こうやって、ひとつひとつ知っていくんだ。昨日の彼の言葉の通り。
ひとつ、ひとつ。