午前0時の恋人契約
「本当は……こんな自分、大嫌いなんです」
「大嫌い……ね」
「人目を気にせず、強くなりたいんです。でも、上手くいかなくて……貴人さんが羨ましいからって、努力を踏みにじるような言い方をしてしまって、本当にすみませんでした」
心の奥の気持ちをひとつひとつ言葉に表すと、また涙が溢れてきてしまう。
ごめんなさいも、すみませんも、言い訳にしか聞こえないかもしれないけれど。
すると、深く下げたままの頭を不意にぽん、と撫でてくれた手。
「え……?」
まさか頭を撫でられるとは思わず、涙で濡れた顔を上げれば、目の前には微笑みこちらを見つめる貴人さんがいる。
「俺こそ、一方的に言いすぎた。ごめん」
「えっ、そんな……あれ、貴人さんって人に謝ることあるんですね」
「お前なぁ……」
まさか『ごめん』と言われるとは思わず、失礼なことを言ってしまう私に、彼は苦笑いで頭を上げさせた。
「ウジウジして言われるがままになってるお前見てたら腹立ってきたんだよ。……けどあれは俺の一方的な意見で、お前の気持ちを考慮してなかったって後から思ってちょっと反省した」
「貴人さん……」
「そうやってすみれのことを考えてるだけで、待ってた時間なんてあっという間だったよ」
はは、と笑う彼の黒い髪を、夜風が優しくなびかせる。