午前0時の恋人契約



私の気持ちも、考えてくれていた。

……本当に、優しい人。その想いに、心はまたあたたかさを増す。

その心に触れるように、彼の指先は私の目元の涙をそっと拭った。



「嫌われたくないとか、そういう気持ちも分かるといえば分かる。俺だって同じだ」

「貴人さんも……?」

「自慢じゃないけど、俺は嫌われやすいからな」

「えっ!?」



嫌われやすいって、誰に?

自嘲するように笑うものの、貴人さんが誰かに嫌われているイメージなど全くつかない。



「上司とか先輩とか、まぁ出る杭は打たれるってやつだな」

「自分で言っちゃうんですね……」

「それほど自分の仕事には自信があるってことだ」



自信満々なその言葉は、彼らしいといえば彼らしいというか……。



けど、言われてみればそうかもしれない。私たち部下や後輩から見れば、頼もしい上司であり先輩でも、彼より上の立場の人からすれば気にくわない存在なのだろう。

だけど、彼がそれに落ち込んだり悩んだりしていることなど見たことがない。



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