午前0時の恋人契約
「嫌なことも嬉しいことも、素直に言ってほしいです……その意見が自分と違くても、一緒に考えて、わかちあいたい」
目を見てしっかりと言い切った私に、横になったままの貴人さんは小さく笑う。
「……あぁ。きっとその相手も、それを望んでいたんだと思う」
そして、そっと伸ばされた手は私の頬に優しく触れる。なでるような長い指先が、くすぐったい。
「恋はつらいことも不安になることもある。中にはそれで、ダメになる人もいるだろう。けど、いいことも沢山ある」
「いいこと……?」
「例えば、その人がいるだけでいつもの景色が輝いて見えたり、知らない自分を知ることが出来る。些細なことが幸せに思えて、弱くもなるがそれ以上に強くなれる」
不安、ダメなところ、それ以上に溢れるのは眩しい日々と新しい自分。
それが、彼の思う恋。
愛しいという気持ちのある、日々。
「だから、諦めるな。前を向け」
頬に触れる大きな手はあたたかく、彼のぬくもりを伝える。
それだけで、俯きがちのこの心は素直に前を向けてしまう。恋をすることって素敵なのかもしれない、そう思えてしまうんだ。