午前0時の恋人契約
彼氏、だなんて。でも……貴人さんのおかげで、雰囲気も変われているのかな。
色気も出てきたなんて、嬉しいかも……。
彼氏の存在を否定しながら、えへへ、とつい頬は緩む。
が、その嬉しい気持ちはほんの一瞬。突然、さわ、と腰を撫でる感触。
……ん?んんん???
こ、これは一体、なにが……。
「あ、あの……部長?すみません、えと……」
「なぁ、今夜どうだ、よかったら一緒に食事でもいかないか?なぁに、心配はいらん。仕事の話をするだけだ」
い、いやいやいや、腰撫でられながらそんなことを言われても説得力がないんですけど……!
でも他部署とはいえ上司だし、断りづらい、けど行ったら仕事の話だけじゃ終わらなそうだし……。
どうしよう、と悩むうちにも、その手は腰から下へと伸びてくる。
そして私の白いフレアスカートに触れかけた、その時。
「市原ー、コピー終わった、か……」
フロア内に響いた声に目を向ければ、入り口に立っていたのは貴人さん。偶然通りがかったのだろう、その目は少し驚いたようにこちらを見る。
わ、わー!!よりによってこんなシーンを貴人さんに見られるなんて!
私と部長がこういう関係って誤解されたらどうしよう……!
違うんです、そうじゃないんです、私なりにも悩んでこの結果なわけで……
心のなかであれこれ言い訳をする私に、貴人さんは状況を読み取るように見るとこちらへと近付く。