口元に微笑みを
1章

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「おっはよーう!」
声とともに自転車のブレーキ音が聞こえ、私の横で止まる。
「おはよ、千花」
私が挨拶を返すと、ほんわかした笑顔が返ってきた。私は開いていた参考書を閉じると鞄にしまう。ふと目に入った時計の針は8時01分を指していた。千花はまた1分遅刻。いつものことだと気にせずに、私は千花に続いて自転車を漕ぎ始めた。
千花と私は小学校からの同級生で、今も同じ高校に通っている。ただ、よく話すようになったのは、同じ高校に通うとわかった中学3年の終わり頃からだ。
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