口元に微笑みを
「あっ、美紀ちゃんだ。おはよー」
門をくぐり、自転車置き場に入ると、共通の友達である管弦楽部の美紀ちゃんがいた。
「おはよー」
美紀ちゃんの隣に自転車を停める千花を尻目に挨拶をしつつ、私は更に奥の置き場に向かう。3年生の後半クラスは奥に自転車を停めねばならないのだ。
あれっ。
そこに、同じクラスの白帆くんがいた。彼と千花、私は同じ予備校に通っている。
「おっす」
「お、おはよ」
挨拶を返したものの、なんだかぎこちなくなってしまった。私は人見知りなうえ、男子と喋るのはもっと苦手なのだ。
私はさっと自転車を停めると、白帆くんの顔も見ずに走って千花と美紀ちゃんの元に向かった。
二人と合流して振り返った時、何故だか白帆くんの背中が少しだけ寂しそうに見えた気がした。でも、きっと私の勘違いだろう。
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