コート〜後ろ姿〜
大好きな彼、拓とのデート。
他愛のない話しをして好きだよと言い合い帰りたくないねと言って過ごす。

一番、幸せな時間。
今日の幸せを考えながら、待ち合わせ場所に着いた。

逢ってすぐに別ればなしを切り出された。
涙が自分の意思とは関係なく流れてきた。

よく辛い事があると、心が痛むと聞くけど、あんなのは嘘だ。

ホントは心にぽっかりと穴が空いた様な喪失感があるだけ。
その穴を埋めるように流れ込んでくる寂しさ。
まるで自分が世界で一人ぼっちになってしまった様な孤独感。

私が死にたいと思った理由。
一言で済んだ。

『飽きた。』
涙が溢れた。
その言葉を聞いた瞬間に自分の中で何かが壊れる音を聞いた。

涙を拭いながら精一杯、声をだした。
『お願い。何でもするから嫌いにならないで。』

涙が邪魔だった。鼻水が邪魔だった。
拓に気持ちを伝えたかった。
でも、伝わらなかった。
『じゃ金くれよ。そうしたら、お前の好きそうなセリフを飽きるまで言ってやるよ。好きだよチエ』

私は震える声を絞り出した。
『嫌だよ。そんな付き合いかた。』

お金をあげるのが嫌だったワケじゃない。
拓が望むなら体を売ったって構わなかった。

ただ、優しい拓と今まで通り付き合いたかった。
そういう意味で嫌だと言った。

だけど拓には言葉そのままに受け取られた。
『じゃお前みたいなウザイ女いらねぇ。』


拓の冷たい言葉。
心に空いた穴が大きくなった。
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