コート〜後ろ姿〜
拓は座り込んだままの私を気にもかけずに行ってしまった。

どれくらいそうしていただろう。
不意に後ろから声をかけられた。

『どうしたのチエ?なにやってるの?』

親友の浅子だった。
やっと物を考えられるようになった。

乾いていた涙の筋にまた涙が伝う。
親友の声が耳を素通りする。
涙だけが暖かかった。
体は冷えきっていたが、どうでもよかった。

親友の優しい声。
心に空いた穴を埋める事は出来なかった。
あまりにも穴が大きすぎた。

人形のようにぎこちない私を心配して家まで送ってくれた。

浅子は見えなくなるまで手を振ってくれた。

送ってくれた浅子には悪いが家に入る気にはなれなかった。
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop