キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


「どうして……ここに?」



何が起きてるのか頭が混乱してよくわからない。


わかるのは、目の前に数年前に別れて以来一度も会っていない父親が目をまん丸く見開いて立っているということだけだ。



「ここで働いてるんだ」


「え……?」



ここで働いてる……?

今気付いたけど、お父さんは白衣を着ている。
胸元には写真付きの名札に【外科 菅野 悟】と書かれていて、ここで医者をしてるんだとやっと理解した。


そうだった。
頭が混乱して訳が分からなくなってたけど、お父さんの職業は医者だった。

昔は総合病院の外科医をしていて、夜勤でいなかったり、休日でも呼び出しが掛かったりしていたっけ。


この病院は母親と暮らしてきた家から然程遠くない。まさかこんな近くにいたなんて思いもしなかった。



「サチは…元気にしてたか?」



気まずいのか、心配してるのかわからないけど、眉を下げ切なげな表情を浮かべるお父さん。


元気にしてたか、か。
その問いに、すぐに返事が出来ない自分がいる。


お父さんが出て行ってからの地獄の日々を思い出す。

元気なわけない。
お父さんが出て行ってから私の人生はめちゃくちゃで、死のうと思っていたぐらいだ。

もし、お父さんが出て行かなければ、私はもう少しマシな人生を送って来れたかもしれない。



「…ごめん。そう、だよな……」



私の様子で何かを察したのか、お父さんは肩を落とした。



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